三菱電線工業時報 第110号
三菱電線工業時報 第110号を掲載いたしました。
三菱電線工業時報 第110号(2023)
▼ 表題・要約 ▼
> ふっ素ゴムと金属間の固着現象のメカニズム-ゴム物性・固着界面・共重合比の評価
■ 著者:津村弦輝
ふっ素ゴムは優れた耐熱性や耐薬品性を有し,これらの性能が必要とされる産業分野で広く用いられているが,相手材との接触の際に発生する固着現象が問題となることが多い.
この現象はよく知られているものの,その発生メカニズムについては未だ解明されていない.
本報文ではビニリデン系ふっ素ゴム(FKM)について,金属との固着メカニズムを明らかにするべく,核磁気共鳴分析(NMR)やX線光電子分光(XPS)を用いて調査を行った結果を紹介する.
材料の力学的な面では,応力緩和が大きいゴムほど金属表面への食い込み量が多く,より固着力が大きくなることを確認した.
また材料の組成面では,四ふっ化エチレン(TFE)の共重合比が大きくなるほど固着力が小さくなることを明らかにし,これらがFKMと金属との固着力を左右する重要な要素であることを示すことができた.
> 金属と難接着性ゴムとの接着剤レス接合技術
■ 著者:山本哲也,柏原一之,芦田桂子
本報文では当社が開発したふっ化ビニリデンフルオロエラストマー(FKM)と金属との接着剤レス接合技術について解説する.
この技術はレーザーを用いて金属表面を粗面化し,そのアンカー効果を利用してゴム材料を加硫・接着するものである.
実用化されている様々なレーザー装置を用いて粗面化した金属とFKMとの剥離強度を比較した結果,ナノ秒(ns)パルスレーザーによる粗面化が最も優れていることが分かった.
レーザーの出力や走査速度,パルス幅などを最適化した条件で粗面化した場合,剥離試験では接合界面で剥離せず,ゴムが凝集破壊するレベルの強度が得られる.
また本技術は接着剤を一切使用しないことから,接着剤由来のアウトガス発生はなく,半導体関連などクリーンな環境を求められる用途には特に適している.